脳脊髄液漏出症を高い精度で診断できる新しいマーカーを発見 AMED

2018年04月17日
脳脊髄液減少症(研究)
KAZ74sP1020894_TP_V4.jpg

先日ご紹介させて頂いた福島医大による新手法発見、タンパク質「脳型トランスフェリン」に注目

記事に関する詳細ニュースです。

下記のURLをクリックしてご覧下さい。

脳脊髄液漏出症を高い精度で診断できる新しいマーカーを発見

平成30年4月16日 プレスリリース
https://www.amed.go.jp/news/release_20180416.html

公立大学法人 福島県立医科大学
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

このたび、公立大学法人 福島県立医科大学 医学部の村上友太博士(脳神経外科学講座・齋藤清教授)

及び星京香博士(生化学講座・橋本康弘教授)らの研究グループは、

脳脊髄液漏出症の新しい診断マーカーを見出しました。

この成果は、国際科学雑誌Biochimica et Biophysica Acta-General Subjectに4月11日に掲載されました。


論文題名

Spontaneous intracranial hypotension is diagnosed by a combination of lipocalin-type prostaglandin D synthase
and brain-type transferrin in cerebrospinal fluid
(脳脊髄液漏出症は脳脊髄液中のリポカリン型プロスタグランディンD合成酵素と
“脳型”トランスフェリン・マーカーの組み合わせにより診断される)

ポイント

脳脊髄液漏出症/脳脊髄液減少症は、脳周囲に存在する体液(脳脊髄液)が漏出し、
 頭痛など多彩な症状を示す疾患ですが、この新しい診断マーカーを脳脊髄液中に複数見出しました。

見出されたマーカーの2つを組み合わせると高い精度で診断が可能となりました(見逃しが5%以下)。

本疾患の診断には髄液腔に放射性アイソトープを注射し、
 その漏出・消失を診断に利用する検査法が行われていますが、
 新しいマーカーはアイソトープを用いないため被曝の心配がなく、
 小児の診断にも有用と考えられます。


福島県立医科大学(竹之下誠一学長)の村上友太博士(脳神経外科学講座・齋藤清教授)

及び星京香博士(生化学講座・橋本康弘教授)らの研究グループは、

脳脊髄液漏出症の新しい診断マーカーを見出しました。

分析に用いた脳脊髄液は、山王病院・脳神経外科(高橋浩一・美馬達夫両博士)

で採取(診断)されたものです。


この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)先端計測分析技術・機器開発プログラム

「脳脊髄液産生マーカーによる脳脊髄液漏出症の診断法の開発」の支援により行われたもので、

今後マーカーの自動分析装置の開発を目指します。

この研究成果は、

国際科学雑誌Biochimica et Biophysica Acta-General Subjectsに2018年4月11日に発表されました。


研究成果の背景

脳脊髄液漏出症/脳脊髄液減少症(以下、脳脊髄液漏出症)は

脳の周囲にある脳脊髄液が漏出し減少することで起きる症状です。

脳が下方に沈降(偏位)するために、

起立性の頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、全身倦怠感など、様々な症状を呈します。

漏出の原因が不明な“特発性”のものと、

交通外傷(むち打ち症)など原因が明らかな“二次性”のものがあります。


脳脊髄液漏出症では頭痛や吐き気など多彩な症状を示しますが、

その強さを量的に表すことは困難です(客観的指標の欠如)。

従って、症状による苦痛の程度は患者本人にしかわからず、

周囲の理解を得られないことがあります。

症状は脳脊髄液の漏れによる脳の沈下(偏位)によって現れるため、

長時間立っていたり、座ったりしていると悪くなり、短時間でも横になると軽快するという特徴があります。

このため、勤務中に度々横になることを繰り返し、

いわゆる“怠け病”と誤解され、離職につながることさえあります。

従来、脳脊髄液漏出症を(数値化して)客観的に診断する良いバイオマーカーは存在しませんでした。


研究成果の概要

そこで、研究グループは、CTミエログラフィーなど他の検査の際に得られる脳脊髄液(注1)を使って

新たな診断マーカーの探索を行いました。

本研究では、成人の“特発性”脳脊髄液漏出症を対象としました。

その結果、脳組織由来のタンパク質である脳型トランスフェリン、

リポカリン型プロスタグランジンD2合成酵素(L-PGDS)(注2)

及び可溶型アミロイド前駆体タンパク質(注3)が本疾患では増加していることがわかりました。

トランスフェリンは鉄の輸送タンパク質です。

主に肝臓で作られて血液中に分泌され、全身の臓器に鉄を運搬します。

我々は、この肝臓で作られるトランスフェリンとは別に、

脳内で作られるトランスフェリンが存在することを見出しました(脳型トランスフェリン)。

脳型トランスフェリンは血液には存在せず、脳脊髄液中にのみ検出され、

髄液の産生マーカーになることを明らかにしています。

脳脊髄液漏出症では、漏出に伴って脳脊髄液の産生が増加するため、

脳型トランスフェリン濃度が上昇すると考えられます。

図1に、脳型トランスフェリンの診断精度(感度82%・特異度83%)を示すデータを示します。

さらに、脳型トランスフェリンとL-PGDSの両者を組み合わせると、

漏出症患者を感度95%(注4)で診断することができることがわかりました。

これらのマーカーは細胞機能を反映する指標であり、

従来のMRIやCTの画像診断とは質的に異なる新たな検査方法となることが期待されます。


本疾患には、脳脊髄液の漏出部位に患者自身の血液を注射して凝固させ、

漏出を止める治療法が有効です
(硬膜外自家血注入療法/ブラッドパッチ法)。


本研究により見出されたマーカーが客観的な診断指標として確立されれば、

漏出症患者の診断精度の向上と適切な治療の適用が期待されます。

現在、髄液漏出の指標として、髄液腔に放射性アイソトープを注射し、

その漏出・消失を診断に利用する検査法が行われています。

しかし、小児患者へのアイソトープ投与は被曝のため好ましくありません。

本研究により見出された診断マーカー測定は、

非アイソトープ検査であるため、小児の脳脊髄液漏出症の診断にも有用となる可能性があります。

なお、福島県では総合南東北病院(郡山)の管桂一博士が本疾患の診療を行っています。


用語説明

注1:脳脊髄液

脳脊髄液は脳や脊髄の周囲に存在する体液です。

従来は、脳内の脈絡叢と呼ばれる組織から分泌され、

脳の内外を循環して頭頂部のクモ膜顆粒から吸収されると考えられています。

脳脊髄液のタンパク質濃度は血液の100分の1程度であり、両者は厳密に隔てられています(血液脳関門)。

従って、脳脊髄液は脳に由来する特徴的なタンパク質を多く含み、

これらは脳疾患の診断マーカーになると考えられています。

注2:リポカリン型プロスタグランジンD2合成酵素(L-PGDS)

L-PGDSは、睡眠に関与するプロスタグランジンD2を生合成する酵素であり、

脳脊髄液に豊富に含まれています。

脳脊髄液産生が減少すると考えられる病態(正常圧水頭症)では、L-PGDSの減少が報告されています。

脳脊髄液漏出症では、代償性に脳脊髄液の産生が増加し、

これに伴って、L-PGDSが増加すると考えられます。

注3:可溶型アミロイド前駆体タンパク質(sAPP)

アルツハイマー病の病的プロセスは、

神経毒性のアミロイドβ(Aβ)ペプチドの脳内蓄積により開始されます。

Aβペプチドは40~42アミノ酸からなる低分子ペプチドであり、

695アミノ酸からなるアミロイド前駆体タンパク質(APP)が2箇所で切断されて生じます。

このとき生じる断片の一つが可溶型アミロイド前駆体タンパク質(sAPP)で、

脳脊髄液中に分泌されます。

脳脊髄液漏出症では、sAPP濃度の増加が検出されましたが、

その増加メカニズム及び病的意義については現在研究中です。

注4:感度度・特異度

診断マーカーが疾患の有無をどの程度正確に判定できるかを示す定量的な指標です。

感度が高いということは、その疾患の患者の大部分が検査陽性になることを意味します。

例えば、脳型トランスフェリンは、脳脊髄液漏出症患者の95%で基準値(正常値)を超えます(感度82%)。

一方、漏出症でない患者で基準値を超える確率は17%です(特異度83%)。

幾つかのマーカーを組み合わせることにより診断の感度を上げ、見逃しを少なくすることができます。
スポンサーサイト



気に入ったらシェア!

のぞみ
この記事を書いた人: のぞみ
<発症原因>
中学時にいたずらによる椅子引きで
尾骨を骨折する
原因不明の多彩な症状が現れ
寝たきり車椅子生活となる
ドクターショッピングを重ね
脳脊髄液減少症だと
診断確定したのは発症から10年後

<診断・検査・治療病院>
国際医療福祉大学熱海病院

<検査結果>
画像診断より
腰椎から複数の髄液ダダ漏れ
脳下垂・硬膜肥厚・静脈拡張
髄圧一桁・残存率一桁の所見あり
脳脊髄液減少症と診断確定

<再検査>
先進医療が実施され再検査の結果
胸椎からの髄液漏れ有り
診断基準に該当
脳脊髄液(漏出症)と診断確定

<病歴20年・治療後10年・男性>
ブラッドパッチ療法2回
アートセレブ(人工髄液)髄注1回

<治療経過>
発症から20年、治療から10年経過
診断前後の7年間は介助が必要な
寝たきり車椅子生活となりましたが
治療+自己流リハビリを重ねて
多彩な症状は消失しましたが
僅かな頭痛・倦怠感の残存症状があり
共存しながらも社会復帰に至りました
全完治まであと一歩です
新ガイドライン策定news(2018年12月~) (4)
ブラッドパッチ療法保険適用決定(2016年) (3)
┗  ブラッドパッチ療法保険適用 (2)
先進医療実施 診断基準(2012年) (1)
学校における脳脊髄液減少症(文部科学省) (1)
子どもの脳脊髄液減少症 (10)
起立性調節障害 (6)
体位性頻脈症候群(POTS) (5)
HSC(ハイリーセンシティブチャイルド) (3)
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン) (1)
障害年金 (9)
交通事故損害(書籍) (1)
自賠責保険 (2)
マイナンバーカード (1)
脳脊髄液減少症(news) (30)
脳脊髄液減少症(研究) (7)
脳脊髄液減少症(患者) (36)
脳脊髄液減少症(芸能人) (4)
脳脊髄液 (21)
新型コロナウイルス (37)
新型コロナウイルス後遺症 (5)
宇宙飛行士と脳脊髄液の関連 (9)
脳神経 (16)
慢性硬膜下血腫 (2)
医療news (33)
医療機器 (7)
整骨院・整体院・カイロプラクティック事故 (1)
書籍 (4)
健康機器 (1)
サプリメント・健康食品 (7)
医薬品news (20)
┣  薬剤性ジストニア (1)
┣  ベンゾジアゼピン系受容体作動薬 (4)
┣  ベンゾジアゼピン離脱症候群 (1)
┣  リリカ(鎮痛薬) プレガバリン (3)
┣  デパス(向精神薬) (2)
┣  レンドルミン(睡眠薬) (1)
┣  モーラステープ(光線過敏症) (1)
┗  タリージェ(疼痛治療薬) (2)
社会news (8)
朝日 健康・医療フォーラム2019 (4)
脳脊髄液減少症の問題点 (7)
厚生労働省認可病院の現状 (1)
患者の体験による発症原因と症状 (5)
検査方法(熱海病院の参考例) (1)
保存的療法(初期段階治療) (1)
国際医療福祉大学熱海病院にて診断確定 (3)
ブラッドパッチ治療後の安静期間と始動 (2)
┗  ブラッドパッチ治療後の腰痛 (1)
ブラッドパッチ治療後の症状 (24)
アートセレブ(人工髄液)1回治療 (5)
経過観察と苦悩 (35)
心の葛藤 (11)
経済的困難の苦悩 (3)
生活不活発病(廃用症候群) (2)
┗  介護用品が必要となった日常生活 (1)
リハビリ(前半) (14)
リハビリ(後半) (10)
リハビリのまとめ(完結) (1)
リハビリ+α (10)
社会復帰への第一歩 (1)
運動リハビリ(運動療法) (16)
┣  家事はリハビリに最適 (1)
┣  水中ウォーキングの注意点 (1)
┣  イメージトレーニング (1)
┣  体幹スロートレーニング (1)
┣  セロトニン分泌(リズム運動) (2)
┣  エンドルフィン分泌(音楽療法) (2)
┣  デュアルタスク(脳疲労) (1)
┣  体水分循環(頭痛・疲労倦怠感・むくみ) (1)
┣  インターバル速歩(脳疲労・疲労倦怠感) (1)
┣  スロージョギング (1)
┗  ヨガ・太極拳 (3)
サプリメントより食事内容(質)の大切さ (12)
┣  食事療法(アミノ酸・たんぱく質) (2)
┣  アミノ酸・炭酸水・クエン酸・ミネラル (2)
┣  腸内細菌(脳腸相関) (3)
┣  下痢(食事療法・運動) (2)
┣  イミダペプチド(抗疲労効果) (1)
┗  乾燥生姜(体の痛み・冷え症) (1)
糖質制限 (2)
口腔アレルギー症候群(OAS) (1)
サプリメント情報(脳脊髄液減少症) (4)
水分補給・脱水 (9)
カフェイン・アルコール (3)
五苓散の利水効果 (1)
パソプレッシンホルモン(尿量の調整) (1)
天気・気圧・湿度の影響 (8)
気象病・天気痛 (5)
花粉症 (4)
┣  光線過敏症 (1)
┗  寒暖差アレルギー (1)
化学物質過敏症・電磁波過敏症 (7)
慢性連日性頭痛・目の奥の痛み (9)
起立性頭痛 (2)
片頭痛 (8)
労作性頭痛 (1)
耳の冷えによる機能性頭痛 (1)
後頭部と耳の後ろが痛い大後頭神経痛 (1)
頭部アロディニア (2)
┗  頭部抜け毛・白髪・皮膚乾燥 (1)
ベル麻痺 (1)
石灰化上皮腫 (1)
自律神経 (5)
動悸・手の振るえ(振戦)チック症状  (2)
心臓・動脈硬化・スモールハート (1)
高血圧 (3)
微熱・悪寒・高熱 (1)
冷え性・体温調節機能・汗腺機能 (6)
疲労・倦怠感・易疲労 (5)
脳疲労・ブレインフォグ (9)
睡眠障害 (9)
睡眠相後退(前進)症候群 (1)
不眠・過眠・ナルコレプシー(オレキシン) (9)
むずむず脚症候群 (1)
高次脳・視空間認知力低下 (1)
めまい・吐き気・動悸 (4)
眼前暗黒感のめまい (1)
光過敏・複視・霧視・残像・視力低下 (2)
緑内障 (6)
加齢黄斑変性 (2)
目の不調は脳が原因 (12)
┣  眼瞼・顔面けいれん (1)
┣  眼球使用困難症 (2)
┣  中枢性羞明 (3)
┗  アーレン症候群 (2)
聴覚過敏・車酔いとめまい (1)
耳鳴り (4)
耳菅開放症 (2)
外リンパ瘻 (2)
メニエール病 「中耳加圧治療」 (2)
APD・聴覚情報処理障害 (1)
鼻詰まり (1)
味覚 (1)
嚥下障害 (1)
非歯原性歯痛 (1)
口内炎・ヘルペス・口角炎・味覚障害 (2)
歯肉炎・親知らず抜歯・ドライマウス (1)
顔のしびれ (1)
顎関節症・三叉神経痛・噛み締め (2)
慢性上咽頭炎・EAT(上咽頭擦過療法) (2)
咽頭痛・異物感・息苦しさ・期外収縮不整脈 (1)
リンパ扁桃腺の腫れ・下顎と首のしこり (1)
長引く咳・むせる咳・咳喘息との関連 (2)
甲状腺機能亢進症(別名バセドウ病) (1)
帯状疱疹 (1)
座位・起立・労作不耐・末梢神経障害 (1)
胸郭出口症候群 (3)
梨状筋症候群 (2)
頚椎症・ストレートネック (1)
肩・肩甲骨・背中・手足の痛み (4)
トゥレット症候群と不随意運動 (1)
血糖値上昇 (2)
反応性低血糖症 (1)
副腎疲労/副腎疲労症候群 (1)
IgG抗体検査に関する注意喚起 (1)
胃痛・胃液逆流・下痢 (1)
機能性ディスペプシア (2)
過敏性腸症候群(IBS) (2)
潰瘍性大腸炎(UC) (3)
頻尿・膀胱炎 (3)
┣  ED症状 (1)
┗  女性化乳房症(男性) (1)
無痛分娩・帝王切開(硬膜外麻酔) (4)
┣  月経前不快気分障害「PMDD」 (1)
┣  PTSDと腸内細菌 (1)
┗  HPVワクチン (1)
パニック障害 (1)
うつ病・抑うつ状態 (6)
経頭蓋磁場刺激法(TMS) (3)
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS) (5)
経頭蓋直流刺激(tDCS) (1)
むち打ち症 (3)
高次脳機能障害 (6)
軽度外傷性脳損傷 (12)
外傷性脳損傷 (4)
遅発性脳障害 (1)
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (55)
小児の慢性疲労症候群 (1)
カルニチン欠乏症 (2)
筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症 (42)
慢性疼痛 (10)
腰痛(慢性痛) (2)
神経障害性疼痛 (7)
複合性局所疼痛症候群(CRPS) (2)
神経疾患(脊磁計) (1)
脊髄刺激療法(SCS) (2)
筋筋膜性疼痛症候群(MPS) (1)
強直性脊椎炎(AS) (10)
筋萎縮性側索硬化症(ALS) (3)
椎間板ヘルニア (1)
パーキンソン病 (3)
認知症・認知障害・アルツハイマー病 (8)
ヘルプマーク (3)
不定愁訴 (5)
インフルエンザ (1)
ドクターショッピング(一部のみ) (8)
コメント受付中断のお知らせ (2)
プライベート (5)
ひとりごと (4)
12月は自分の生き方を振り返る (4)
命とは生きるとは (6)
年末・年始の感謝とご挨拶 (12)
ごあいさつ (1)