脳へ薬剤を送りこめ~「脳関門」をどう突破するか

2018年06月21日
脳脊髄液
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脳には血液脳関門・血液脳脊髄液関門、網膜には血液網膜関門があり、

脳や網膜へ必要な物質以外の異物が簡単に入らないようにしていますが、

認知症などの神経難病の治療に応用できる薬を脳の中へ送り込む新技術を開発した。

というニュースがありました。


脳へ薬剤を送りこめ~「脳関門」をどう突破するか

6/21(木) Yahoo!ニュース 個人 石田雅彦
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20180621-00086788/

脳には異物を排除するバリア機構があり、薬を脳へ運び入れることがこれまで難しかった。

今回、東京医科歯科大学などの研究グループが

認知症などの神経難病の治療に応用できる薬を脳の中へ送り込む新技術を開発した。


身体にある関門とは

脳には血液脳関門(Blood-Brain Barrier、BBB)や

血液脳脊髄液関門(Blood-Cerebrospinal Fluid Barrier、BCSFB)があり、

網膜には血液網膜関門(Blood-Retinal Barrier、BRB)があり、

これらが脳や網膜へ必要な物質以外の異物が簡単に入らないようにしている。

そのため、薬を患部へなかなか到達させられず、

アルツハイマー病などの脳神経疾患や糖尿病性網膜症などの

網膜の病気の治療は難しいとされてきた。


こうした関門は生体が備えたバリア機構で、

身体のあちこちへ酸素やグルコースやアミノ酸などの

栄養などを運ぶための血液が通る血管にある。

脳の毛細血管も必要な物質を通すが、

血管の細胞が密着している隙間よりも大きな分子の物質は通さない。


ところが、酒を飲むとアルコール(エタノール)が

消化器官を経て肝臓から身体の中に吸収されるが、

アルコールは分子量が小さく水溶性でも脂溶性でもあるので、

脂溶性の物質を透過させやすい血液脳関門から脳へ入ってしまう。

そのため、脳の機能へ影響を与え、酔っ払ってしまうというわけだ。


また、タバコを吸うとニコチンが肺から吸収され、血液から素早く脳へ到達し、

ニコチン性アセチルコリン受容体という脳内の報酬系を刺激する。

だが、ニコチンがどうやって血液脳関門を通ることができるのか、

そのメカニズムはよくわかっていない。

おそらくニコチンの持つイオンの性質(カチオン、陽イオン)が

作用しているのではないかと考えられている(※1)。


最近の研究では、妊娠中の母子の間にある胎盤にも関門があることがわかってきたが、

母体由来の腸内細菌などの微生物が血液脳関門の形成に

影響を与えているのではないかという研究もある(※2)。

共生菌が脳の機能をつかさどっているということかもしれず、

減菌や殺菌が必ずしもすべていいわけではないことを示唆する。


脳のバリアをどう突破するか

このように脳関門や網膜関門などの身体の関門は、外部からの異物の侵入を防ぐバリアでもあるが、

同時に患部へ薬を運び入れるのを阻害する厄介な機構だ。

血液脳関門からはいくら薬を入れようとしても目的の0.1%ほどしか到達できないという状況が続き、

なんとかして血液脳関門を突破しようと世界中の研究者が試みてきた。


血液脳関門などは日本の研究が先端をいっているようなところもある。

これまで小膠細胞(ミクログリア、Microglia)を使った名古屋大学の研究グループの研究があり(※3)、

最近では日本の研究グループによる脳内へ薬剤を運ぶナノマシンを開発したという発表もあった(※4)。

これは東京大学などの研究グループが開発したグルコース濃度の変化という外部刺激に応答して

血液脳関門を高効率で通過する直径30nmの微小高分子で、水溶液の中で自己組織化するナノマシンだ。


こうした血液脳関門への挑戦として最近、新たな研究成果が発表された。

日本の東京医科歯科大学の研究グループによるものだ(※5)。

がんやアルツハイマー病など遺伝子変異が疑われる病気に対し、

そのターゲットとなる遺伝子の機能を失わせたり減退させたりする作用(アンチセンス)を持つ薬を使う。

あるタンパク質によって血液脳関門を通過させ、

脳の中枢神経系へ薬を到達させることができたという。


アンチセンスの核酸医薬で用いられる薬(相補的なmRNA)は分子標的薬などといわれ、

周囲の無関係な遺伝子にほとんど影響を及ぼさず、ターゲット遺伝子にだけ作用させ、

病気やその進行を抑えることが可能と考えられている。

だが、アンチセンス核酸薬が血液脳関門を通過できる量はあまりにも少なく、

これまで患部の遺伝子に作用させることが難しかった。


日本医科歯科大学のリリースによれば、

脳内の毛細血管の細胞が接する部分の密着結合(血液脳関門)に作用する

アンギュビンディン1というタンパク質の断片をマウスに静脈注射し、その後、

アンチセンス核酸薬を静脈注射したところ、アンチセンス核酸薬が従来より大量に脳や脊髄に到達し、

ターゲットとなる遺伝子の発現が約40%抑制されたという。


現段階ではマウスでの実験だが、

研究グループは血液脳関門がある血管の3つの細胞の結合を制御するという

薬物送達の手法の成功は世界初という。

将来的には、アルツハイマー病を含めた認知症や脊髄性筋萎縮症などの

神経関連の難病の根本治療も可能となるかもしれない。


※1-1:Yuma Tega, et al., "Functional expression of nicotine influx transporter in A549 human alveolar epithelial cells." Drug Metabolism and Pharmacokinetics, Vol.31, Issue1, 99-101, 2016

※1-2:Shin-ichi Akanuma, et al., "Role of cationic drug-sensitive transport systems at the blood-cerebrospinal fluid barrier in para-tyramine elimination from rat brain." BMC, Fluids and Barriers of the CNS, Vol.15:1, 2017

※2:Viorica Braniste, et al., "The gut microbiota influences blood-brain barrier permeability in mice." Science Translational Medicine, Vol.6,(263), 263ra158. doi:10.1126/scitranslmed.3009759, 2014

※3:Fumihiro Imai, et al., "Neuroprotective effect of exogenous microglia in global brain ischemia." Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism, Vol.27, 488-500, 2007

※4:Yasutaka Anraku, et al., "Glycaemic control boosts glucosylated nanocarrier crossing the BBB into the brain." nature COMMUNICATIONS, DOI: 10.1038/s41467-017-00952-3, 2017

※5:Satoshi Zeniya, et al., "Angubindin-1 opens the blood-brain barrier in vivo for delivery of antisense oligonucleotide to the central nervous system." Journal of Controlled Release, Vol.283, 126-134, 2018


石田雅彦
フリーランスライター、編集者

Masahiko Ishida:医科学修士(MMSc)、横浜市立大学・共同研究員。
近代映画社を経て醍醐味エンタープライズ(編プロ)代表。
ネットメディア編集長、紙媒体の商業誌編集長など。
自然科学から社会科学まで多様な著述活動を行う。
法政大学経済学部卒、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、
同博士課程在学中。
日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)会員。
著書に『恐竜大接近』(集英社、監修:小畠郁生)、
『遺伝子・ゲノム最前線』(扶桑社、監修:和田昭允)、
『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』(ポプラ社)、
『季節の実用語』(アカシック)、
『おんな城主 井伊直虎』(アスペクト)など。
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のぞみ
この記事を書いた人: のぞみ
<発症原因>
中学時にいたずらによる椅子引きで
尾骨を骨折する
原因不明の多彩な症状が現れ
寝たきり車椅子生活となる
ドクターショッピングを重ね
脳脊髄液減少症だと
診断確定したのは発症から10年後

<診断・検査・治療病院>
国際医療福祉大学熱海病院

<検査結果>
画像診断より
腰椎から複数の髄液ダダ漏れ
脳下垂・硬膜肥厚・静脈拡張
髄圧一桁・残存率一桁の所見あり
脳脊髄液減少症と診断確定

<再検査>
先進医療が実施され再検査の結果
胸椎からの髄液漏れ有り
診断基準に該当
脳脊髄液(漏出症)と診断確定

<病歴20年・治療後10年・男性>
ブラッドパッチ療法2回
アートセレブ(人工髄液)髄注1回

<治療経過>
発症から20年、治療から10年経過
診断前後の7年間は介助が必要な
寝たきり車椅子生活となりましたが
治療+自己流リハビリを重ねて
多彩な症状は消失しましたが
僅かな頭痛・倦怠感の残存症状があり
共存しながらも社会復帰に至りました
全完治まであと一歩です
新ガイドライン策定news(2018年12月~) (4)
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光過敏・複視・霧視・残像・視力低下 (2)
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耳菅開放症 (2)
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鼻詰まり (1)
味覚 (1)
嚥下障害 (1)
非歯原性歯痛 (1)
口内炎・ヘルペス・口角炎・味覚障害 (2)
歯肉炎・親知らず抜歯・ドライマウス (1)
顔のしびれ (1)
顎関節症・三叉神経痛・噛み締め (2)
慢性上咽頭炎・EAT(上咽頭擦過療法) (2)
咽頭痛・異物感・息苦しさ・期外収縮不整脈 (1)
リンパ扁桃腺の腫れ・下顎と首のしこり (1)
長引く咳・むせる咳・咳喘息との関連 (2)
甲状腺機能亢進症(別名バセドウ病) (1)
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座位・起立・労作不耐・末梢神経障害 (1)
胸郭出口症候群 (3)
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トゥレット症候群と不随意運動 (1)
血糖値上昇 (2)
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副腎疲労/副腎疲労症候群 (1)
IgG抗体検査に関する注意喚起 (1)
胃痛・胃液逆流・下痢 (1)
機能性ディスペプシア (2)
過敏性腸症候群(IBS) (2)
潰瘍性大腸炎(UC) (3)
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無痛分娩・帝王切開(硬膜外麻酔) (4)
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┣  PTSDと腸内細菌 (1)
┗  HPVワクチン (1)
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うつ病・抑うつ状態 (6)
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経頭蓋直流刺激(tDCS) (1)
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高次脳機能障害 (6)
軽度外傷性脳損傷 (12)
外傷性脳損傷 (4)
遅発性脳障害 (1)
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筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症 (42)
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