「疲れ」って何なのでしょうか? 疲れのメカニズム(末梢性疲労と中枢性疲労)

2018年12月26日
脳疲労・ブレインフォグ
AME20181201D009_TP_V4.jpg

疲労には、末梢性疲労と中枢性疲労の2種類があります。

疲れのメカニズムについてのニュースがありました。

脳脊髄液減少症の症状にも疲労・倦怠感があります。

何かヒントを得られると良いのですが。


「疲労物質=乳酸」はもう古い|「疲れ」はどこから来るのか

2018年12月25日 JST
https://www.huffingtonpost.jp/yasuhiro-nakamura/fatigue-lactic-acid_a_23622054/

この記事は、サライ.jp 2018年10月15日配信記事

「「疲労物質=乳酸」はもう古い|「疲れ」はどこから来るのか」からの

転載に加筆・修正を加えたものです。

疲れのメカニズムについて解説します。


■疲労には2種類ある

「疲れる」ということはヒトが生命活動をしていく上で必要なサインで、

過剰な活動に よって疲弊したり病気になるのを防ぐための重要な症状なのです。


疲れるサインを無視して働き続けたり体を酷使し続けると、

過労死やうつ病、生活習慣病をはじめとする様々な病気が起こってしまいます。

じつは、その「疲労」は、カラダとアタマを守るための機構として2種類に大別されます。

一つはカラダの疲労、運動などによる肉体的な疲労「末梢性疲労」

もう一つは肉体的な限界に至る前に感じられる疲労「中枢性疲労」です。

この2種類の疲れは表裏一体の関係にありますが、

『今、自分がどちらの疲れを強く感じているのか』を自覚することで、

その時有効な疲れの対処法が変わりますので、

疲れを感じた時、まずこの2種類を意識するようにしましょう。(*1)

それを踏まえた上で、疲労の原因が何かを解説したいと思います。


■「疲労物質=乳酸」はもう古い!?

これまで「乳酸」が疲労の原因物質と考えられていましたが、

近年の研究によりその考え方は過去のものになりつつあります。

従来、乳酸は筋肉の中では疲労回復を遅らせると考えられてきました。

血中に放出された乳酸は体内pHの低下(体液のバランスが酸性に傾く)を

生じさせることに加え、乳酸が脳にも回り、

これが筋肉疲労を脳に知らせているシグナルで、

かつ脳の疲労の原因物質であるかのように

極めて単純に考えられた時代もありました。(*2)

しかし、乳酸は疲労を抑制するように働く、

という従来と真逆の研究成果が注目を集めています。

乳酸は運動により筋内から血中に放出されますが、筋肉や心臓に取り込まれ、

エネルギー源として利用されることが判明しました。

また、脳でも乳酸が神経細胞周囲の細胞によって作られますが、

疲労の抑制やエネルギー物質として利用されることがわかってきたのです。(*3)


■末梢性疲労は「カラダの疲れ」!休息することで改善する

末梢性疲労は「筋疲労」と「末梢神経性疲労」に大別されます。

これらの疲労現象は、筋肉に存在するグリコーゲンなどのエネルギー源の枯渇、

血液の恒常性の失調(一時的な血流不全など)、

調整機能失調(神経筋伝達の遅延)などによって、

筋が発揮できる力が減り、俊敏性や巧緻性も低下し、パフォーマンスが低下します。

また、筋疲労に引き続いて起こる筋肉痛は、

運動中に生じた筋肉の損傷後の炎症に伴う機械的刺激や化学的刺激によって起こり、

さらにパフォーマンスが低下します。

しかし、末梢性疲労は炎症の収束とともに回復するのが特徴で、

十分な休息と栄養を取ることが末梢性疲労を解消するカギになります。(*4)


■中枢性疲労は「脳の疲れ」。解消にはストレスのフィルターを鍛えろ!

一方、中枢性疲労は精神的(ココロ)な疲れで、

「痛い」「寒い」などの"感覚"に近いものと言えます。

疲労の度合いはカラダやアタマを酷使する量と比例せず、

心理的な疲れであることを考えると、理解しやすいでしょう。

例えば、スポーツでカラダを酷使した後であっても心地よさを感じることがある一方で、

カラダは酷使していないのに長時間続く会議など、ストレスや緊張状態が続くことで、

ぐったり疲れてしまうことがあります。

このように「ストレスの感じ方」が中枢性疲労には重要になってきます。


ストレスの処理は主に脳の「前頭前野」と呼ばれる場所で行われ、

ここの処理能力はその日の体調やコンディションに影響を受けます。(*5)

日によって疲れ方が異なるのは

前頭前野の「ストレスのフィルター」としての能力が関係しているのですね。

この処理がうまくいかないと強い疲労や過労死などを生む原因となるのです。

逆に、このフィルターを意識して鍛えることで中枢性疲労を改善することができるのです。


■脳の疲れと疲れに伴う症状は「酸化ストレス」が引き起こしていた

前頭前野で処理されたストレス刺激が脳内で大きくなると、

脳の活動が活発になり脳の酸素消費量が増大します。

酸素がたくさん使われた後には、その副産物として大量の活性酸素、

つまり酸化ストレスが産生されます。

通常は酸化ストレスから細胞を守るシステムが働き、活性酸素は除去されますが、

処理しきれないほどの酸化ストレスが産生されると、

細胞がダメージを受け機能不全に陥ってしまいます。

このダメージやストレス負荷が脳の各部位に伝わることで、

疲れやだるさを感じたりカラダに異常が生じるのです。(*6)


■前頭前野:作業効率が落ちる、やる気がなくなる、寝られないなどの症状が現れます。

これは疲労感を増悪させ、さらにストレスがかかるという負の連鎖に陥ります。

■大脳辺縁系:大脳辺縁系にストレス負荷が伝わると、

ストレスから身を守るために自律神経、内分泌などを介してストレス反応を形成します。

その結果、胃腸の不良、肩こり、頭痛、注意力低下、抑うつ感などが症状として現れます。

■脳内神経伝達:疲労感と脳内の「セロトニン」と呼ばれる

神経伝達物質の枯渇は密接に関係しているとされます。

脳細胞が酸化ストレスによりダメージを受けることでセロトニンが枯渇してしまい疲労感が増します。

うつ病では、このセロトニンの低下がうつ状態の主因と考えられており、

セロトニン神経伝達部位でのセロトニンを薬剤によって増やすと

うつ状態が改善されることが知られています。


疲労や精神的ストレスは脳内で活性酸素などの酸化ストレスを生む。

前頭前野ではセロトニン分泌が低下し、

抑うつ感、疲労感、意欲的か、作業効率低下などを生じさせる。

大脳辺縁系では自律神経やホルモンバランスが崩れ、

頭痛や肩こりなどの症状が生じる。

酸化ストレスを解消するために免疫細胞から「インターフェロン」などの免疫物質が分泌されるが、

これは酸化ストレスの処理だけでなく、

脳内神経伝達物質である「セロトニン」の分泌も阻害し疲労感に拍車がかかる負の連鎖を生む。


それだけではありません。

酸化ストレスが発生すると、それから体を守ろうとする免疫機構が働きます。

例えば、免疫物質の「インターフェロン」は

上述のセロトニン分泌を弱めてしまうことがわかっています。(*7)

B型肝炎、C型肝炎の治療などで用いられた「インターフェロン治療」の代表的な副作用が

「うつ病」であったことは多くの人が知るところです。

インターフェロンはカラダを守る物質として有益ですが、

疲労感やうつ病の原因にもなるのです。


以上、疲労のメカニズムについて解説しました。

日常であなたが「疲れた」と感じるのはカラダの疲れでしょうか?

脳の疲れでしょうか?

まずは、この違いを意識しましょう。

それぞれ、疲れを感じるメカニズムは異なりますし、それに応じた対処法も異なります。

さて、どのように対処するのがいいのか、次回解説することにします。

【参考文献】

1.Neuroreport 2004; 15: 2571-4

2.Br J Sports Med 2004: 38; 648-9

3.Folia Pharmacol Jpn 2007: 129; 94-8

4.Cochrane Database Syst Rev 2011: 6; CD004577

5.NeuroReport 2003; 14: 51-5

6.Biol Psychiatry 2009: 15; 344–8
スポンサーサイト



気に入ったらシェア!

のぞみ
この記事を書いた人: のぞみ
<発症原因>
中学時にいたずらによる椅子引きで
尾骨を骨折する
原因不明の多彩な症状が現れ
寝たきり車椅子生活となる
ドクターショッピングを重ね
脳脊髄液減少症だと
診断確定したのは発症から10年後

<診断・検査・治療病院>
国際医療福祉大学熱海病院

<検査結果>
画像診断より
腰椎から複数の髄液ダダ漏れ
脳下垂・硬膜肥厚・静脈拡張
髄圧一桁・残存率一桁の所見あり
脳脊髄液減少症と診断確定

<再検査>
先進医療が実施され再検査の結果
胸椎からの髄液漏れ有り
診断基準に該当
脳脊髄液(漏出症)と診断確定

<病歴20年・治療後10年・男性>
ブラッドパッチ療法2回
アートセレブ(人工髄液)髄注1回

<治療経過>
発症から20年、治療から10年経過
診断前後の7年間は介助が必要な
寝たきり車椅子生活となりましたが
治療+自己流リハビリを重ねて
多彩な症状は消失しましたが
僅かな頭痛・倦怠感の残存症状があり
共存しながらも社会復帰に至りました
全完治まであと一歩です
新ガイドライン策定news(2018年12月~) (4)
ブラッドパッチ療法保険適用決定(2016年) (3)
┗  ブラッドパッチ療法保険適用 (2)
先進医療実施 診断基準(2012年) (1)
学校における脳脊髄液減少症(文部科学省) (1)
子どもの脳脊髄液減少症 (10)
起立性調節障害 (6)
体位性頻脈症候群(POTS) (5)
HSC(ハイリーセンシティブチャイルド) (3)
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン) (1)
障害年金 (9)
交通事故損害(書籍) (1)
自賠責保険 (2)
マイナンバーカード (1)
脳脊髄液減少症(news) (30)
脳脊髄液減少症(研究) (7)
脳脊髄液減少症(患者) (36)
脳脊髄液減少症(芸能人) (4)
脳脊髄液 (21)
新型コロナウイルス (37)
新型コロナウイルス後遺症 (5)
宇宙飛行士と脳脊髄液の関連 (9)
脳神経 (16)
慢性硬膜下血腫 (2)
医療news (33)
医療機器 (7)
整骨院・整体院・カイロプラクティック事故 (1)
書籍 (4)
健康機器 (1)
サプリメント・健康食品 (7)
医薬品news (20)
┣  薬剤性ジストニア (1)
┣  ベンゾジアゼピン系受容体作動薬 (4)
┣  ベンゾジアゼピン離脱症候群 (1)
┣  リリカ(鎮痛薬) プレガバリン (3)
┣  デパス(向精神薬) (2)
┣  レンドルミン(睡眠薬) (1)
┣  モーラステープ(光線過敏症) (1)
┗  タリージェ(疼痛治療薬) (2)
社会news (8)
朝日 健康・医療フォーラム2019 (4)
脳脊髄液減少症の問題点 (7)
厚生労働省認可病院の現状 (1)
患者の体験による発症原因と症状 (5)
検査方法(熱海病院の参考例) (1)
保存的療法(初期段階治療) (1)
国際医療福祉大学熱海病院にて診断確定 (3)
ブラッドパッチ治療後の安静期間と始動 (2)
┗  ブラッドパッチ治療後の腰痛 (1)
ブラッドパッチ治療後の症状 (24)
アートセレブ(人工髄液)1回治療 (5)
経過観察と苦悩 (35)
心の葛藤 (11)
経済的困難の苦悩 (3)
生活不活発病(廃用症候群) (2)
┗  介護用品が必要となった日常生活 (1)
リハビリ(前半) (14)
リハビリ(後半) (10)
リハビリのまとめ(完結) (1)
リハビリ+α (10)
社会復帰への第一歩 (1)
運動リハビリ(運動療法) (16)
┣  家事はリハビリに最適 (1)
┣  水中ウォーキングの注意点 (1)
┣  イメージトレーニング (1)
┣  体幹スロートレーニング (1)
┣  セロトニン分泌(リズム運動) (2)
┣  エンドルフィン分泌(音楽療法) (2)
┣  デュアルタスク(脳疲労) (1)
┣  体水分循環(頭痛・疲労倦怠感・むくみ) (1)
┣  インターバル速歩(脳疲労・疲労倦怠感) (1)
┣  スロージョギング (1)
┗  ヨガ・太極拳 (3)
サプリメントより食事内容(質)の大切さ (12)
┣  食事療法(アミノ酸・たんぱく質) (2)
┣  アミノ酸・炭酸水・クエン酸・ミネラル (2)
┣  腸内細菌(脳腸相関) (3)
┣  下痢(食事療法・運動) (2)
┣  イミダペプチド(抗疲労効果) (1)
┗  乾燥生姜(体の痛み・冷え症) (1)
糖質制限 (2)
口腔アレルギー症候群(OAS) (1)
サプリメント情報(脳脊髄液減少症) (4)
水分補給・脱水 (9)
カフェイン・アルコール (3)
五苓散の利水効果 (1)
パソプレッシンホルモン(尿量の調整) (1)
天気・気圧・湿度の影響 (8)
気象病・天気痛 (5)
花粉症 (4)
┣  光線過敏症 (1)
┗  寒暖差アレルギー (1)
化学物質過敏症・電磁波過敏症 (7)
慢性連日性頭痛・目の奥の痛み (9)
起立性頭痛 (2)
片頭痛 (8)
労作性頭痛 (1)
耳の冷えによる機能性頭痛 (1)
後頭部と耳の後ろが痛い大後頭神経痛 (1)
頭部アロディニア (2)
┗  頭部抜け毛・白髪・皮膚乾燥 (1)
ベル麻痺 (1)
石灰化上皮腫 (1)
自律神経 (5)
動悸・手の振るえ(振戦)チック症状  (2)
心臓・動脈硬化・スモールハート (1)
高血圧 (3)
微熱・悪寒・高熱 (1)
冷え性・体温調節機能・汗腺機能 (6)
疲労・倦怠感・易疲労 (5)
脳疲労・ブレインフォグ (9)
睡眠障害 (9)
睡眠相後退(前進)症候群 (1)
不眠・過眠・ナルコレプシー(オレキシン) (9)
むずむず脚症候群 (1)
高次脳・視空間認知力低下 (1)
めまい・吐き気・動悸 (4)
眼前暗黒感のめまい (1)
光過敏・複視・霧視・残像・視力低下 (2)
緑内障 (6)
加齢黄斑変性 (2)
目の不調は脳が原因 (12)
┣  眼瞼・顔面けいれん (1)
┣  眼球使用困難症 (2)
┣  中枢性羞明 (3)
┗  アーレン症候群 (2)
聴覚過敏・車酔いとめまい (1)
耳鳴り (4)
耳菅開放症 (2)
外リンパ瘻 (2)
メニエール病 「中耳加圧治療」 (2)
APD・聴覚情報処理障害 (1)
鼻詰まり (1)
味覚 (1)
嚥下障害 (1)
非歯原性歯痛 (1)
口内炎・ヘルペス・口角炎・味覚障害 (2)
歯肉炎・親知らず抜歯・ドライマウス (1)
顔のしびれ (1)
顎関節症・三叉神経痛・噛み締め (2)
慢性上咽頭炎・EAT(上咽頭擦過療法) (2)
咽頭痛・異物感・息苦しさ・期外収縮不整脈 (1)
リンパ扁桃腺の腫れ・下顎と首のしこり (1)
長引く咳・むせる咳・咳喘息との関連 (2)
甲状腺機能亢進症(別名バセドウ病) (1)
帯状疱疹 (1)
座位・起立・労作不耐・末梢神経障害 (1)
胸郭出口症候群 (3)
梨状筋症候群 (2)
頚椎症・ストレートネック (1)
肩・肩甲骨・背中・手足の痛み (4)
トゥレット症候群と不随意運動 (1)
血糖値上昇 (2)
反応性低血糖症 (1)
副腎疲労/副腎疲労症候群 (1)
IgG抗体検査に関する注意喚起 (1)
胃痛・胃液逆流・下痢 (1)
機能性ディスペプシア (2)
過敏性腸症候群(IBS) (2)
潰瘍性大腸炎(UC) (3)
頻尿・膀胱炎 (3)
┣  ED症状 (1)
┗  女性化乳房症(男性) (1)
無痛分娩・帝王切開(硬膜外麻酔) (4)
┣  月経前不快気分障害「PMDD」 (1)
┣  PTSDと腸内細菌 (1)
┗  HPVワクチン (1)
パニック障害 (1)
うつ病・抑うつ状態 (6)
経頭蓋磁場刺激法(TMS) (3)
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS) (5)
経頭蓋直流刺激(tDCS) (1)
むち打ち症 (3)
高次脳機能障害 (6)
軽度外傷性脳損傷 (12)
外傷性脳損傷 (4)
遅発性脳障害 (1)
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (55)
小児の慢性疲労症候群 (1)
カルニチン欠乏症 (2)
筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症 (42)
慢性疼痛 (10)
腰痛(慢性痛) (2)
神経障害性疼痛 (7)
複合性局所疼痛症候群(CRPS) (2)
神経疾患(脊磁計) (1)
脊髄刺激療法(SCS) (2)
筋筋膜性疼痛症候群(MPS) (1)
強直性脊椎炎(AS) (10)
筋萎縮性側索硬化症(ALS) (3)
椎間板ヘルニア (1)
パーキンソン病 (3)
認知症・認知障害・アルツハイマー病 (8)
ヘルプマーク (3)
不定愁訴 (5)
インフルエンザ (1)
ドクターショッピング(一部のみ) (8)
コメント受付中断のお知らせ (2)
プライベート (5)
ひとりごと (4)
12月は自分の生き方を振り返る (4)
命とは生きるとは (6)
年末・年始の感謝とご挨拶 (12)
ごあいさつ (1)